【音楽家×短編小説】No.9「少年と悪魔」〜キートンのシナリオコレクション〜

皆さん、こんばんは!


シナリオコレクションのお時間です。


急に涼しくなってきましたね。

早くも9月に突入!


学生の皆さんは、夏休みの宿題は無事終わりましたか??


夏休みの宿題の進め方にも色んなタイプがあると思いますが、


僕は、夏休みの始めに面倒くさい宿題だけをざっと終わらせて、たっぷり遊んだ後、

夏休みの終わりに残りの比較的楽な宿題を一気に片付けるという、


賢いんだか馬鹿なんだかよく分からないやり方をしていました(笑)

効率は良いのかな・・?


僕は少数派の特殊な例だとして、


学生の頃の記憶では、周りのほとんどは31日に徹夜で必死にやるタイプだったなあ。。


こんな取り組み方1つとっても性格が出ますよね(笑)


さて、それでは、本日の脚本に参りましょう!


                    【少年と悪魔】

透明で何の濁りもない池のほとりを、1人の少年が歩いている。

その少年は、アメリカの肥大する格差社会を知らず、

バングラデシュのスラム街でゴミの山と暮らす子ども達を知らず、

世界各地で勃発する血で血を洗う紛争のことを知らなかった。


なぜか、その少年は裸だった。

だが、少年はそれを特に恥ずかしがる様子もない。


その時、少年の正面から、まがまがしい雰囲気を持った何かが近づいてきた。


悪魔だ。


明らかに人ではない、おぞましいフォルムをしている。


だが、少年にそれが分かるはずもない。

人にも悪魔にも会ったことがないのだから。


悪魔は言った。


「初めまして坊や。」


少年は答えた。


「初めまして、えーと。。」


悪魔「私のことは、サタンとでも呼んでおくれ。」


少年「初めまして、サタンさん。」


悪魔「初めまして。

少しお話をしたいんだけどいいかな?」


少年「うん、いいよ。」


悪魔「ありがとう。

坊や、私と契約をしないかい?」


少年「契約?」


悪魔「そう契約だ。私と坊やでお約束をするんだよ。

私の力を使って君を"天才"にしてあげよう。」


少年「天才?なにそれ?」


悪魔「天才というのはね、他の多くの人よりもずっと素晴らしい力を持っていて、

ずっと多くの人の役に立つことが出来る特別な人のことだよ。

人間というのはね、これが欲しくて欲しくてたまらないんだよ。

富も名声もまとめて手に入る。

素晴らしいとは思わないかい?

凡人たちには決して味わうことのできない快楽さ。

だから、天才になれば、誰からも尊敬されて、愛されて、最高の気持ちになれるんだよ。」


少年「うーん、よく分からないけど、何か楽しそうだね。天才って。」


悪魔「そう、とっても楽しいのさ!

ただし、これには少しのリスクがあるんだ。

ただで、天才の力を与えてしまうとそれは不平等だし、周りの人間達がうらやんでしまう。

何事もバランスが大事だ。

だから、天才の力を与える代わりに1つ君の大切なものをもらうよ。」


少年「大切なもの?

それって取られると痛いの?」


悪魔「いやいや、何てことは無いさ。

天才の力を得られると考えればね。

そうだなあ、君からは少しばかりコミュニケーション能力をもらおうかな。

人間との接し方は少し苦労するかもしれないけど、君は天才なんだから大丈夫さ!」


少年「コミュニケーション能力かあ。よく分からないけど、天才になれるのならいいや!」


悪魔「よし、いい子だ。では、契約をしよう。

一度結んだ契約は決して破棄できないけどいいね?」


少年「うん。」


悪魔「よし。

そうだなあ、君の場合は。。うん、"絵画"にしよう。

坊やは、今から絵画の天才だ!

。。。さあ、これで契約完了だ。

では、坊や、またどこかで会えたらいいな。さようなら。」


少年「サタンさん、さようなら。」


悪魔は姿を消した。


少年はぼんやりとその背中を見送っていた。


自分の体の奇妙な変化を感じながら。★


天才のことを語る時に、


「悪魔に魂を売り渡した」


などという表現がされることがあります。


その表現をもとに、物語を作ってみたのがこの脚本です。


以前もお話したかと思いますが、僕はこの"天才"という言葉にすごく興味があります。


だから、偉人伝とか、天才について書かれた本が家にたくさんあります(笑)


"天才"と一言に言ってもその定義は人それぞれですが、


僕は、天才というのは、普通の人が成し得ないような偉大な結果や功績を残した人物に対して与えられる"称号"のようなものだと思っています。


つまり、先天的なずば抜けた才能を持つ人物だけでなく、

後天的な努力によって天才になることも可能だということです。


といっても、努力ができるのも才能という考え方もありますが(笑)


なので、この脚本には僕の考え方は反映されていません。

この脚本通りだと、天才は完全に先天的なものだということになってしまいますから。


ところで、僕が天才に興味を持つ理由は、その"アンバランスさ"にあります。


天才と呼ばれる人の中には、特定の分野でずば抜けた才能を持っている一方で、

普通の人が当たり前にできるようなことが出来なかったりする人が多いです。


逆に、知能や精神に障害のある方が、他の障害のない人たちに比べて、

記憶力が優れていたり、一部の五感が極端に発達していたりすることもあります。


「サヴァン症候群」などがいい例です。


棒グラフで言えば、まさに凸凹な状態。


極端な場合、日常生活すらまともに送れないような人もいます。


特に芸術分野でそのイメージが強いですね(笑)


その分、人生も波乱万丈だったりして、とてもエンターテイメント性が強いんですよね。


人として面白みがあるし、欠点がはっきりしている方が、人間臭くて魅力的に映る。


だから、僕は、どんな分野もマルチにこなせるオールラウンダータイプよりも、

特定の分野に特化した職人さんのようなタイプに憧れます。


というより、僕の場合、不器用すぎてオールラウンダーにはなりたくてもなれないんですが(笑)


生きているうちに、これだけは負けないっていう分野が開拓できたら

人生はとても豊かになるでしょうね!


それでは、また次回!

キートンでした。

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