皆さん、こんばんは!
「キートンのシナリオコレクション」のお時間です。
さて、今週も、我々NSTINDANCETONの脚本の中から皆さんにご紹介していきますよー!
今回の脚本のタイトルは
「おしゃれな怪物」
です!
さて、今誰か連想しましたか?
そうです、実はこの脚本、
我がNSTINDANCETONメンバーのロビンをモデルにした脚本なんです!
「いや、誰が怪物やねん!」
という入院中のロビンのツッコミが飛んできそうですが(笑)
まあ、実際のところ、
彼に初めて会うとそれくらいのインパクトはありますからねえ。。
いまだに久しぶりに顔を合わすと、
「やっぱりでかいなあ。。」
なんてしげしげと眺めてしまうくらいですから(笑)
もちろん、内容は完全にフィクションです。
それではどうぞ!
【おしゃれな怪物】
「さようなら、おしゃれな怪物さん。」
「さようなら、坊や。」
それが私が彼と交わした最後の会話だった。
彼は今どうしているだろうか。
どこかで元気に過ごしていると良いのだが。
「とてつもなく大きくて、服を着飾っているクマのような怪物を見たんだ!!」
そんな奇妙な目撃情報が近所中を駆け回るようになったのはもう10年以上前のことだ。
最初にその話を聞かされた人達は気でも違ったのかと思ったことだろう。
しかし、目撃情報は日増しに増えていった。
帽子をかぶっている、体長は3メートルを越える、気性が荒く人間を食べる、
人間のように服を身にまとっている、動きはあまり素早くない、森に住んでいる、
ハチミツが好物。
目撃情報をまとめるとこんなところだろうか。
そんな変てこな怪物いるわけがないじゃないか。
他人事のようにそのニュースを聞いていた私が、
まさか、その噂の怪物に遭遇するなんて思ってもみなかった。
あれは、記録的な夏の夕立が私の村を襲ったやけに蒸し暑い日だった。
仲間達と公園で遊んでいた私は、突然頭上に広がった雨雲を見上げながら、
みんなに、今日は早めに帰ろうという提案をしたあと、
手を傘にしてまっしぐらに帰路を駆け抜けた。
公園と私の家の途中には森のような広い場所があるのだが、
私は雨宿りにと、そこへ駆け込んだ。
断っておくが、人気もなく物寂しげなその森のことを私は決して好きではなく、
普段もまず行くことはない。
しかし、何の導きか、その日はたまたまその広場に立ち寄ったのだ。
雨が木の葉に打ちつけられる音を聞きながら、
途方に暮れていた私の背後でふいにがさっという音がした。
それはほんの小さな音だったのかもしれないが、そのときの私にはやけに大きく聞こえた。
恐る恐る振り向いてみると、私の目線は壁のようなものにぶつかったあと、
やり場を無くしたまま少しずつ上昇し、ほとんど空を見上げるくらいの高さで止まった。
そこにクマを思わせる怪物がいた。
普通なら悲鳴の一つでもあげそうなものだ。
しかし、なぜだか、不思議と恐怖は感じなかった。
彼の持つ優しさに本能的に気づいていたのかもしれない。
目撃情報は、概ね的を射てるように思えたが、
一つだけ間違っているなと直感で感じる情報があった。
それは“気性が荒く人間を食べる”ことだ。
とても、気性が荒そうには見えない。
大人しくこちらを見ている彼の姿は、いじらしくすらある。
おそらく彼の大きさを見て驚いた人たちが、大げさに情報を盛ったに違いない。
「こんにちは、坊や」
それは私が聞いた彼の第一声だった。
そこに敵意は全く感じられなかった。私は思わず言った。
「こんにちは、おしゃれな怪物さん。」
それからというもの、私は“おしゃれな怪物さん”と時々会って話をした。
怪物さんは物知りだった。
特にファッションに関する話が多く、帽子や服のこだわりについて熱く語っていた。
歌もうまかった。
どうやってきれいに声を出すのか、コツを教えてくれた。
また、怪物さんは見た目の通り、よく食べた。
もちろん人間ではなく、普通の食べ物をだ。
ハチミツではなく、お肉が好きらしい。
目撃情報にまた一つ間違いを見つけたようだ。
そして、何よりおしゃれな怪物さんは優しかった。
今まで会ったどんな人間たちよりも。
同時に私は何ともいえない怒りが湧いてくるのを感じた。
これほど優しい怪物さんのことを人々がなにも理解していないことに。
そして、見た目だけで判断をし、怪物さんを虐げようとする人間達の醜さに。
しかし、怪物さんと会うのが密かな楽しみとなっていた私に、突然別れは訪れた。
ある日、いつも怪物さんと会っていた森の広場に怪物さんは現れなかった。
次の日も、また次の日も。
しばらく経った夏の夕立の日、
私はふと思い立って怪物さんと初めてあった木の下に行ってみることにした。
怪物さんがいなくなって以来、来るのは初めてだ。
怪物さんがいなくなった現実を認めるのが怖かったからだろう。
ふと木の下を見ると、怪物さんがいつもかぶっていた帽子が置いてあることに気がついた。
その上には紙が置いてあり、「さようなら、坊や」とひとこと添えてあった。
なぜ突然いなくなったのか。何があったのか。
詳しいことは何も書かれていなかった。
しかし、そのひとことを見たとき、
私にはそれらのことがもはやどうでも良いことのように思えた。
年月が流れ、私は大人になった。
怪物さんからもらった帽子は、森の広場に行くときには必ずかぶっていく。
そして、木の下に来ると、私は慣れたいつもの位置まで目線を上げ、こうつぶやくのだ。
「こんにちは、おしゃれな怪物さん。」
蒸し暑い夕暮れ時になるといつも私は思い出す。
物知りで、とっても優しくて、歌がうまくて、大食いで、おしゃれな怪物さんのことを。★
いかがでしたか?
少し小説チックですね(笑)
文体に縛られず書けるのが脚本作りの面白いところですね。
さて、入院中のロビンはこのブログを見ているのでしょうか(笑)
気に入ってくれているといいなあ。。
それではまた次回!
キートンでした。
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